社内研修「空手の稽古に学ぶ 心身の成長を促す運動療育」

2025/09/26

今回は、「空手の稽古に学ぶ 心身の成長を促す運動療育」というテーマで社内研修を行いました。

空手というと、複雑な型を行ったり、強く突きや蹴りを行うなどの激しいイメージがあるかもしれませんが、実は子どもの心と体の育ちにぴったりの要素がたくさん詰まっています。

空手とは

元々は沖縄(琉球)発祥の武術で、徒手空拳(素手)で相手と戦う格闘技です。

しかし、ただ戦うだけでなく、

・心と体を鍛える

・礼儀を重んじる

・忍耐力や集中力を育てる

といった「人としての成長」をとても大切にしています。年齢や体力に関係なく誰もが「強く優しい心と体」を目指して稽古を重ねるのが空手の魅力です。

空手の基本稽古の流れと療育的効果

以下は、空手道場(フルコンタクト空手)で習う一般的な稽古内容をもとに、それぞれの活動が療育現場で活用できるポイント整理してみました。

※フルコンタクトとは「直接打撃制」という意味で、実際に相手の体に突きや蹴りを当てるルールの空手です。

①準備運動(柔軟・関節運動)

• 怪我予防や柔軟性の獲得につながります。

  →療育的観点:ボディイメージの向上。

②基本稽古(突き・蹴り・受け・立ち方)

• 正拳突き、回し蹴りなどの動きを正確に繰り返し行います。

 →療育的観点:模倣力、反復力、筋力向上、姿勢保持力の獲得。

③移動稽古(動きながら技を行う)

•前後左右に移動しながら突きや蹴りといった動きを行います。

 →療育的観点:バランス感覚、体幹強化、リズム感が身につきます。

④型稽古(動作の連続・順序を覚える)

•一定の型の反復練習をします。

 → 療育的観点:順番を覚え、集中して取り組むことで、ワーキングメモリや順序性を刺激します。

⑤組手稽古/スパーリング(※安全面から実際には療育中では行わない)

 • 実際に相手と技を競い合う形式で行います。

 →療育的観点:対人スキル、適切な力加減の獲得をすることができます。

⑥補強運動

 •腕立て・腹筋・スクワットなどを通して、基礎体力作りを行います。

 →療育的観点:筋力、持久力、体幹、自信の育成につながります。

⑦ミット稽古

 •パンチやキックをミットに当てることで、明確な目標に向かって力を出す力を高めます。

 →療育的観点:集中力、達成感、発散にも効果的!

⑧整理運動・正座・黙想・礼

•活動の始まりと終わりを、礼や黙想で切り替えます。

 →療育的観点:気持ちを落ち着ける練習、社会的マナーの習得につながります。

空手を通して育つ力:5つのポイント

1.内側の力と外側の力の育成

 黙想など気持ちを静める活動と、突く・蹴るなどの活動をすることで、気持ちや力のコントロールの仕方を獲得します。

2.達成感と自己肯定感

 「できた!」という経験が自信になり、挑戦する意欲を育みます。

3.礼儀とふるまい

 挨拶・正座・黙想などの礼儀作法を通して、場にふさわしい行動を自然と身に付けることができます。

4.反復と集中力

 技の繰り返しが集中力・注意力を育て、学習や日常生活にも好影響!

5.集団行動と社会性

 ルールを守り、順番を待ち、仲間と一緒に協調する力が育ちます。

療育施設での活動例(10分メニュー)

1分:礼と黙想(スタートのけじめ)

2分:準備運動(体をほぐす)

3分:突き体操(正拳・上段など)

3分:ミットに向かってパンチ(やわらかい素材で)

1分:礼と黙想(しめくくり)

短時間でもしっかりと身体を動かすことができ、「始まり」と「終わり」がはっきりするので子どもも安心して取り組めます。

配慮事項

•道場での稽古ではないので組手は行わない(安全第一で!)。

• ミットは柔らかいクッションなど手を傷めないものを使用。

• 難しい動きは簡単にし、動作の一部だけでもOK。

•礼や黙想の時間を通じて、活動の切り替えを分かりやすくする。

まとめ

空手は、身体を強くするだけでなく、心や社会性の成長にもつながります。療育現場では、技の正確さよりも「楽しさ」「成功体験」「継続」を大切にしています。

安全に配慮しながら、遊びや運動、礼儀の時間をバランスよく取り入れていくことで、子どもたちの成長を後押しすることができます。

「空手」と聞くと武道的な厳しさをイメージしてしまい、ハードルが高く感じるかもしれませんが、まずは突きや蹴りのマネや黙想など取り組みやすいものから試してみるのがおすすめです!

参考文献

・国際空手道連盟極真会館公式サイト

 https://www.kyokushinkaikan.org/ja