社外研修「自閉スペクトラムなど発達障害のある子どもと‘’楽しく育てる’’コミュニケーション」

2025/07/31

今回は、「渋谷区の特別支援教育講演会」に参加してきました。

テーマは「自閉スペクトラムなど発達障害のある子どもと‘’楽しく育てる’’コミュニケーション」。講師は、自閉スペクトラム症(ASD)やSST・バディシステムの研究・執筆でご活躍されている森脇愛子先生です。

ASDの子の大学での姿、子どもたちが成長していく過程で大切にしたいコミュニケーションのあり方、そして支援者として私たちができることについて、たくさんの学びがありました。

1.大学生になったASDの子どもたちの姿

保護者の多くは、「この子が大学に進学したらどうなるのか?」と将来の姿を思い描くと思います。実際の大学進学率を見てみると、日本では障害のある人の大学進学率はわずか1.79%と低く、アメリカの11%と比べても大きな差があります。

現在は、小中高で発達障害の診断を受けるケースが増えていますが、大学進学後に苦戦してから診断を受けるケースも増加中。特に、ASDの学生は、大学からのタスクの多さに戸惑うことが多い一方で、同じ学力水準の仲間と過ごすことで、コミュニケーションがしやすくなる一面もあるそうです。

☆大学生活で安定して過ごすために

・「推し活」などの、自分の好きなことがあると生活が安定しやすい。

・特別支援教育のステップを踏んでおくことで合理的配慮の申請がしやすくなります。

「特別支援教育のステップ」とは、幼児期から高校までの間に障害のある子どもが適切な支援を受けるための流れで、大学で合理的配慮の支援を受けるための準備となります。「合理的配慮」とは、障害のある学生が平等に学べるように大学が行う調整で、障害者差別解消法に基づいて提供されます。申請の流れは、①大学の相談窓口で状況や必要な配慮を伝える。②申請書と診断書などの書類を提出するという手順です。

☆就職に向けての注意点

短期集中型の頑張り方(一夜漬けタイプ)では、長期的な働き方に適応しづらくなる可能性も。無理をせず、自分に合った場所を見つけながら進むことが大切です。

2.幼少期から学童期の経験が影響する

ASDの子どもたちは、小中学校時代にいじめや孤立、コミュニケーションの難しさなどで苦労することが多いそうです。そうした中で、「教師や支援者、療育仲間との出会い」が子どもの支えになってきました。

また、大学生になると、親との距離感も変わってきます。思春期・青年期らしい自立の姿が見られる一方で、困難に直面した時には「親が言っていたから」と、親の言葉や考え方を心の支えにする場面もあります。

3.「楽しく育てる」コミュニケーションとは?

「楽しいコミュニケーション」には、様々な記憶の積み重ねが大切です。

子どもにとっての「楽しい」は、大人のそれと違うこともあります。

例えば、子どもにとっては

・身体的に楽しい 

・反応があって楽しい 

・安定していて楽しい 

・共感して楽しい 

・所属して楽しい 

・新しさや期待がある

などが楽しいの基準となります。

ただし、これらを成立させるには、心と体が安心できる環境作りが前提です。

また、大人は言語による情報を、子どもは非言語による情報(雰囲気、声のトーン、距離感、肌感覚など)をコミュニケーションの拠りどころにしてるので、その違いに気付くことも大切です。

4.ASDなどの子どもとのコミュニケーションを楽しく!楽しむ!

コミュニケーションを育てるには、様々なツールの活用が役に立ちます。

・TEACCHプログラム

・ABA(応用行動分析)

・PECS(絵カード交換式COMシステム)

・SST(ソーシャルスキルトレーニング)

☆大切なのは「本人が選ぶ、決めるという主体性を尊重すること」

子ども一人ひとりに合わせた「コミュニケーションのチューニング」が必要です。

5.コミュニケーションのヒント

・こだわり:行動、思考、言語、習慣などにも表れ、「安心安全」というコミュニケーションの土台にも深く関わる。

・感覚特性:感覚過敏/低反応など、本人の困り感に寄り添う理解と配慮が必要。

・身体症状:アレルギー疾患、喘息、アトピー、睡眠障害などの内科的症状、外傷、事故といった外科的症状などの、身体の不調がコミュニケーションにも影響を及ぼすことがある。

・対人スタイル:ASDは特性が「ある/ない」ではなく、「どれくらいあるか」という連続性(スペクトラム)でとらえる。

最後に

長い時間のかかわりの中で、少しずつ子どもの心の中に「相手の存在」が生まれてきます。日々のほんの些細なことの積み重ねが、その子の中で大切な記憶として残っていきます。

そのためには、「大人が楽しむ」コミュニケーションではなく、「子どもが望む」コミュニケーションを大切にすることが重要です。

この研修を通して、改めて「子どもにとっての必要で大切な関わり」とは何か、自分自身も考える時間となりました。

講師紹介:

森脇愛子先生(青山学院大学 教育人間科学部 心理学科 准教授)

公認心理士/臨床発達心理士/博士(教育学)