社内研修「自閉症を抱える子ども ― 自閉症に伴う感覚統合上の特別なニーズと課題を理解する ―」 第9章~第10章

2026/01/22

先日、元白梅学園大学 教授 増田 修治先生による「自閉症を抱える子ども(第9章~第10章)」についての研修を行いました。

第9章自閉症を抱える子ども

自閉症は最初に発見されて以来、専門家や保護者を困惑させてきた脳の障害である。

自閉症は多くの場合、1人か2人の近しい人を除く他者と関わることの困難を伴い、言葉を話せるようになっても、たいていは限られた話し方しかできない。

言葉の構音は問題なくても、抑揚が普通でなかったり、オウム返しの反復が見られたりする。

~感覚処理の障害~

自閉症の子どもによくみられる感覚処理の問題には、3つの特徴がある。

①感覚入力が脳に正しく「登録」されていないため、あるものにはほとんど関心を向けない一方で、過剰に反応する場合もある。

②感覚入力、特に前庭感覚と触覚の調整が上手くいっていないため、重力不安や触覚防衛が見られる場合がある。

③何かをしたい、特に新しいことやいつもと違うことをしたいという欲求を生み出す脳の部分が十分に働いていないため、一般に目的がある、あるいは建設的とみなされることにほとんど関心がないように見えることがある。

■感覚情報の「登録」

脳には、どの感覚入力を登録して注意を向けるかを「判断」し、さらにその情報に対して何かをするかどうかを決める部位が(大脳辺縁系の中に)ある。

自閉症の子どもの脳ではこの部位が上手く働いていないので、他のみんなは気づいている多くのことが脳に登録されない。

この部位の働きが悪いほど、自閉症児に社会生活への参加に必要なスキルを発達させるための支援は難しくなる。

また、自閉症の子どもは、自分の視環境を無視しているように見えることもある。

人越しにどこかをじっと見つめたり、見られている相手の目を見るのを避けているように見える。

このような子どもの脳は、どの視覚情報が重要で、どれが関係ないものかを把握することがなかなかできない。

ほとんどの自閉症児の注意を引き付ける種類の視覚刺激は、縞模様だ。

白と別の色の縞模様が目の前を通り過ぎると「視運動性眼振」が起こり、それが前庭神経核を刺激するのである。

※視運動性眼振:視覚入力によって生じる眼球運動と同様の眼振

他の感覚刺激もうまく登録できないことのある自閉症児

首の後ろに息を吹きかけたときに何の反応も示さない。

→このような子どもの多くは、においを登録できず、味覚もあまりないようだ。

転んだりぶつかったりしても反応を見せないことも多く、まるでよほど強い痛みではない限り痛みを感じないように見える。

ものの感触に過剰に敏感な自閉症児

幼いときは、食感が気に入らないために、固形物を食べようとしないことがある。

他の人に触られることに拒否反応を示す子どももいる。

→この種の感覚処理の問題は、重度の失行症の子どもにもみられる場合がある。

非常に強い触圧は、自閉症の子どもに肯定的な反応を起こさせやすい種類の触覚刺激である。

何かを感じたいのだが、おそらく非常に強い感覚しか脳に登録されないのだろう。

こうした子どもの中には、ずっと両手が不快に感じているような行動をする子がいて、強い圧力をかけることで楽になるようだ。

自閉症の子どもは、筋肉と関節からの感覚入力については、目や耳からの入力よりもよく感知する。

■感覚入力の調整

重力不安のある子どもの場合は、少なくとも一部の感覚入力は登録しているので、感覚統合アプローチを用いたセラピーに効果がある可能性が大きい。

自閉症の子どものほとんどは、かなり強い感覚でない限り、多くの触覚入力を登録しない。

しかし、触覚を登録するだけでなく、その刺激に防衛的な反応を示す場合もある。

■感覚の統合

視知覚を確立するのにとても時間がかかり、何かを知覚したとしても、うまく知覚できないことがある。

→新しいセーターをもらっても、そのセーターについての馴染みのある知覚がまだ形成されていないため、着たがらない。

セーターを何度も見た後なら着る気になるかもしれないし、しばらくは肩にかけさせると効果があるかもしれない。

セーターが肩に触れる感触が、視覚入力だけでは確立できなかった知覚を形成する助けになる。

■「やりたい」と思わせる機能

感覚入力を登録する仕組みと同じように、この「やる気」システムも、自閉症の子どもの場合はかなりムラがある。

母親が自閉症の子どもに靴下を履くといった単純なことを何とかしてやらせようとしても、子どもはまるで覚える気がないかのような、あるいは、言うことを聞くのを拒否しているかのような行動をとる。子どもがわざと母親の努力に抵抗しているように見えるかもしれないが、それよりも、そのときは脳が「やる気」システムを働かせられないだけの可能性が高い。

後になって、難なく自分で靴下を履くこともある。

このような子どもが物理的環境のさまざまな要素と相互作用しない理由のひとつは、多くのものの意味や考えられる使い方を登録しないことにある。

三輪車の使い方を理解するには、自分の身体とその働きについての知識と、さらにある程度の抽象思考能力も必要になるが、自閉症の子どもには難しい。

自閉症の子どもにとっては、実際に行うことが一番の学習方法なのである。

10章評価と介入

セラピーの基本原則

セラピーが最も効果を発揮するのは、子どもが主体的に行動を決め、一方でセラピストがその邪魔にならないように環境を整えている時である。

私たちの目的は、子どもがしている活動や、その他の具体的な運動スキルを教えようとしているのではなく、子どもが身体面、情動面、学力面でよりよく機能できるように支援することである。

様々な運動スキルや学業能力、あるいは人生で必要になる類の好ましい行動を「学習する能力」を高める手助けをしたいと考えている。

■セラピーの雰囲気づくり

セラピーの目的のひとつは、子どもの内的な方向づけを強化し、生活の中で主体的に行動する力を高めることであり、子どもたちは、

物理的環境とに関係や他者との人間関係における内的な方向づけも発達させる必要だ。

自分の行動を主体的に決める能力があってこそ、自信が生まれるのである。

まとめ

道具の使い方などを理解するのが難しいお子様もいらっしゃいますが、まずは実際にやってみることが大切だと学びました。

運動療育を行うことで、自己肯定感を高め、お子様が主体的に行動できるようになれる手助けを今後もしていきたいと思います。

参考文献

A・ジーン・エアーズ著

「自閉症を抱える子ども ― 自閉症に伴う感覚統合上の特別なニーズと課題を理解する ―」

「評価と介入 ― 感覚統合アプローチを用いたセラピーにはどのような効果があるのかー」